コスパ良好なイヤホンを連発しているEarFun社が放った2023年新作「Earfun Air Pro 3」。定価8990円、通常7000円台、安ければ6000円台で買える本品は、主要部品にスマホのCPU(SoC)で有名なQualcomm社の最新チップ「QCC3071」を使い、ハイレゾ相当の高音質なaptX Adaptiveコーデックに対応しているほか、将来的にBluetoothの最新規格「LE Audio」にも対応予定。ノイズキャンセリングは独自のQuietSmart 2.0テクノロジーにより-43dB相当の低減効果が得られ、マイクの音質もcVc 8.0(Clear Voice Capture)により外部ノイズを最大90%低減、複数機器をつなげられるマルチポイント接続、充電ケースはワイヤレス充電対応、急速充電OK、専用アプリ「EarFun Audio」に対応、などなど、2023年初に考えられる機能は概ね積み込みました、といった趣の商品です。
当サイトでは購入後数日使ったファーストインプレッションを書かせていただきましたが、その後も結構気に入って使っていましたので、改めてしっかりレビューしてみたいと思います。機能面はともかく、ファーストインプレッションと内容がカブる点も多いと思いますが、普段使いで気が付いた点など、スペックからは見えない点も書いていきたいと思います。
機能・概要
機能満載の「Earfun Air Pro 3」ですが、Earfun社のサイトやAmazon販売ページでわかる主な特徴はこんな感じです。
- Qualcomm社最新チップセット「QCC3071」採用
- ハイレゾ相当の高音質コーデックaptX Adaptiveに対応
- 次世代BluetoothオーディオのLE Audioに対応予定
- 独自のQuietSmart2.0により、アクティブノイズキャンセリング -43dB相当のノイズ軽減機能
- 11mmの大型ダイナミックドライバーを採用、迫力のある低音から滑らかな中高音まで艶のあるサウンド
- 左右各3基の高性能マイクを内蔵、騒がしい環境でも相手にクリアな音声で通話可能
- マルチポイント機能搭載
- 専用アプリ「EarFun Audio」によって、豊富な機能をカスタマイズ
- イヤホン本体で最大9時間、充電ケースと合わせて最大45時間の再生時間
- IPX5相当の防水対応
- ワイヤレス充電・急速充電に対応
EarFun Air Pro 3の特徴はたくさんありますが、一言でいえば「全部入り」と言えるかと思います。この価格帯の機種では貴重な機能を1つ挙げるとすれば、「マルチポイント接続」でしょうか。高音質コーデックやANCについては例えばSOUNDPEATSの「Capsule 3 Pro」にもありますが、マルチポイント機能は「Capsule 3 Pro」にはついていません。マルチポイント機能は例えばスマートフォンとPCを持っている、あるいはスマートフォン2台持ち、といった場合に有効で、2つのデバイスで使うときに接続しなおす手間がかからないので、地味ですがとても便利な機能です。
また、充電ケースはワイヤレス充電に対応していて、Qiに対応した充電器を使えば置くだけで充電できます。最近、Qi対応のワイヤレス充電器は100均(ダイソーとキャンドゥ)にも500円~1000円で売っているので、スマホの充電器も兼ねて買ってみるのもアリだと思います。
パッケージ内容
パッケージ内容の写真を撮り忘れてしまったのでEarfun社のページからの抜粋ですが、本体のほかにイヤーピースが4種類(XS,S,M,L)、充電ケース、USB TYPE-Cケーブル、マニュアル類です。イヤーピースにXSがあるのは良いことだと思います。
もちろん片耳のみの利用にも対応していますし、IPX5相当の防水にも対応しています。IPX5の定義からすれば、シャワーを浴びる程度のことであれば問題ないレベルの防水性能です。
外観
充電ケース
充電ケースの形状は丸みを帯びた箱型で、サイズは60mm x 50mm x 31mm。厚みがある分若干大きく感じますが、持ちやすいです。表面は艶消し加工が施されていて、指紋が目立つといったことはありません。写真は光の関係で若干光沢あるように見えますが、普通の黒一色です。表面加工も普通なので、高級感といったものはありませんが、つくりはしっかりしていると思います。
なお、丁寧につかっていましたが、気が付いたら傷ができてしまいました。素材がプラスチック、かつ艶消し加工のためか、やや傷がつきやすいようです。
ケースはこのようにパカっと開ける形です。ケースを開けると真ん中にマルチポイント接続用のボタンがついています。
ふたを開けやすいように切り欠きはついていますが、形状が底面に向かってすぼんでいく形をしているので、若干開けにくいです。LEDは白で光ります。反対側にはUSB TYPE-Cの端子があります。
AirPods Proと比較するとこんな感じです。縦横はあまり変わりませんが、厚みがあります。ちょうどフタの分だけ厚いイメージです。
本体
本体はステムのついたいわゆるうどん型です。ステム上部の円の部分がタッチセンサーになっています。外側はがんメタリック色、内側は光沢がある黒です。
本体内側に充電端子がついています。重さは5.2gです。
ケースの時もそうでしたが、AirPods Proと比較すると本体も若干ながら大きいです。
音質など
音質レビュー
音質の印象はiPhoneでAAC接続、アクティブノイズキャンセリングONにした際の印象です。
発売前から各種レビューサイトでは「低音がすごい」と言われていましたが、音質的にはみなさんおっしゃる通り低音がめちゃくちゃ強い印象でした。全体が埋もれるくらい強くて、「なんじゃこりゃ」と思っていたのですが、しばらく使っているうちに慣れたのか、エイジング効果か、ファームウェアアップデート(Version 0.31 → Version 0.35 → Version 0.36 → Version 0.37)の影響か、バランスはやや改善されたように思います。
とはいえ、低音域がかなり強いことには変わりありません。ドンシャリ傾向の音が苦手で、バランスの良いサウンドを求める方は購入を控えたほうが良いと思います。低音域ばかり目立ちますが、高音域までちゃんと出ており、高音域も自然に伸びている印象を受けます。ただし、音源によっては高音域が低音域に埋もれてしまう場合があり、若干クリアさに欠ける印象を受ける曲もあります。とはいっても、高音域が出ていないわけではないので、アプリのイコライザーで音質を調整すれば、好みの音に近づけられると思います。当サイト管理人は若干シャリシャリさせたかったので、プリセットの「高音ブースト」と「低音を弱める」を合成した形に調整しています。
なお、購入当初はiPhoneで調整したイコライザー設定が保存されない不具合(?)がありましたが、ファームウェアVersion 0.36からは修正され、iPhone/Androidともきちんと保存されるようになりました。
(2023.02.23)2月23日現在の最新ファームウェアではさらにバランスが改善され、サウンドのクリアさが増したような印象です。低音域は最初から比べるとだいぶマシになり(まだ強いですが、だいぶマイルドになりました)、高音域が伸びるようになって、全体的なバランスが良くなりました。そのままでも十分聞ける音になりましたが、現在はイコライザーの「高音ブースト」が個人的にはちょうどいい感じです。
音場はめちゃくちゃ広いというわけではないですが、とにかくすべてが真ん中に聞こえてくるということはなく、それなりに音の広がりを感じることができるレベルにはあると思います。解像感に関してもデフォルト状態だと若干甘い点はありますが、イコライザーの効きが良いので、低音を下げたりすることで、明瞭感が増すことが感じられると思います。
aptX Adaptivieで接続した場合も基本的な音の傾向は変わりません。解像感が若干増したかな、という感覚で、何度か聞き比べてみてわかるようなレベルなので(自分の耳が良くないせいかもしれませんが・・・)、あまり気にする必要はないと思います。以前レビューした、「SOUNDPEATS Mini Pro HS」は一聴してわかるくらいの変化がありましたが、それよりは変化の幅は少ない気がしました。
アクティブノイズキャンセリング(ANC)
本機「Earfun Air Pro 3」のアクティブノイズキャンセリング性能は、メーカーのページによると、「業界最高水準の-43dB」とされています。
とはいえ、1万円以下のイヤホンに搭載されているアクティブノイズキャンセリング(ANC)は、Apple AirPods ProやSONYのWF-1000XM4など、ANCで定評があるものとは圧倒的に差があります。同レベルの機能を期待するのはやめておいたほうが良いと思います。
本機のノイズキャンセリング性能は、1万円以下のイヤホンのなかでも指折りのANC性能を保有していることは確かだと思います。ファーストインプレッションでも書いた、Airpods Pro 2の7割くらいのレベル感との印象は変わっていません。
本機「Earfun Air Pro 3」のノイズキャンセリングは概ねどのようなシチュエーションでも効いている印象を受けます。雑踏の喧騒、地上を走る電車、地下鉄いずれのシチュエーションでも強烈に聞くというわけではないですが、ON/OFFで「あ、効いているね」とわかる効き方はしています。音楽をかけていると、人声も含め周囲の音をあまり意識せずに済みます。特に電車の中ではONにすると音楽が結構聴きやすくなりますし、地下鉄車内でiPhoneのボリュームで下から2段階目くらいでもそれなりに音楽を聞くことができるくらいでした。
ANCにすると低音がブーストされ、若干ホワイトノイズが聞こえるようになります。低音ブーストはアプリのイコライザーで調整可能、ホワイトノイズは音楽を聞いていればわからないので、十分許容範囲かと思います。
ANCのON/OFFは一度ケースにしまっても状態は保存されており、ANC ONにした状態でケースにしまうと、次に使うときもANC ONになった状態で聞き始めることができ、ストレスがないのは良いポイントです。
風切り音についてはかなり優秀で、同時期に似たような価格で発売されたSOUNDPEATS の「Capsule 3 Pro」と比べても風切り音が抑えられており、風切り音の抑え具合はAirPods Pro2にかなり近づいた印象です。
もしかしたら個体差なのかもしれませんが、歩いているときの振動音をかなり拾います(ドスドス歩くとボッ、ボッって感じの音がします)。イヤーピースを変えるとかなり改善されますが、ファーストインプレッションの時からさらにいろいろ試してみましたが、やはり完全には抑え込めず。もしかしたら不具合なのかもしれません。
イヤーピースは結局ファーストインプレッションの時と変わらずfinalのTYPE-E クリア TWS専用を使っています。これだと歩行時のボスボス音もだいぶ抑えられますし、低音域から高音域まで比較的バランスよく聞こえます。本機もイヤーピースで結構低音部が変わるので、いくつか試してみると良いと思います。
(2023.03.18追記)最近、ファームウエアを0.42にアップデートしたのですが、なんと歩行時のボスボス音がほぼなくなりました!これはかなり大きい改善です。そのかわり、何となくであまり自信がないのですが、少しノイズキャンセリング性能が落ちたような気がします。
マイク性能
マイクの性能は非常に良好で、聞き取りやすいクリアな音質で声を相手に伝えてくれます。Zoomで試してみましたが、過去最高レベルで聞きやすい音質で相手方に届いていました。
遅延度合い等
動画視聴時の遅延は全く気にならないレベルです。iPhoneでボリュームを最低にすると、それなりに小さい音になります。もう1段階減ると良いのですが、十分な小ささかと思います。
マルチポイント機能
本機はマルチポイント接続が可能で、最初に接続した機器に加えて、もう1つ同時に接続することができます。とりあえずiPhoneとAndroid、iPhoneとPCで試してみました。実際には両方同時に再生してもどちらか一方が再生されます。基本的に最初に再生されたほうが優先されるようです。
マルチポイント接続するには、充電ケースが必要になります。1つの機器に接続したのち、本体を充電ケースに戻し、ケース中央のボタンを長押しすることで、もう1つの機器を接続することが可能です。
この機能、非常に便利で、iPhoneとWindowsに接続しておくと、外出時にはiPhoneで音楽を楽しみ、家または会社でPCでWeb会議、等いちいちペアリングしなおさなくて良くなります。
「Earfun Audio」アプリ
Earfun Air Pro 3は「Earfun Audio」アプリに対応しています。「Earfun Audio」アプリでは、ANCのON/OFFやゲームモード設定、イコライザー設定、ファームウェアのアップデート等を行うことができます。本機はカスタマイズしたほうが性能を発揮できますし、ファームウェアのアップデートで音質が変わったりしますので、アプリはダウンロードしておいたほうが良いと思います。
総評
発売当初から、1万円以下のイヤホンとしては高機能と話題の本機「Earfun Air Pro 3」。発売当初は低音域が強すぎてかなり使う人を選ぶイヤホンだったと思います。しかし、4回のファームウェアアップデートを経て、(現状でもかなり強いですが)低音域のバランスが見直されて音質がマシになり、アプリで好みの音質を探ることもでき、ANCの効きも1万円以下のイヤホンのなかではかなり良く、風切り音も抑えられ、マイク性能も良好、マルチポイントも便利、、、と、良い点がたくさんある機種になりました。
音質的にはまだまだ低音は強くて人を選ぶ面は否定できませんが、アプリのイコライザーがしっかり効くし、保存されるようにもなりましたので、音質を調整することを厭わないのであれば、今のところ1万円以下の中では最良の選択肢の1つ、といっても差し支えないのではないかと思います。
(2023.02.23)ファームウェア0.3.9では、デフォルトでもかなりバランスが改善されました。低音域が強いことは確かですが、常識的に「かなり強い」くらいのレベルまで下がってきましたし、音質調整なしの状態でもだいぶバランスが良くなり、発売当初よりも音質が改善されています。
大体5,000円程度のイヤホンを探している方は、もう少しお金が出せるなら本機「Earfun Air Pro 3」を買うのも一つの考え方だと思います。5000円程度のものと比べて、アプリの利用が前提になりますが音質の幅は広がりますし、ANCの効きの良さ、マルチポイント接続、aptX Adaptive対応など、2000円分にしては十分な機能強化が望めると思います。
Appendix. ボタン操作一覧
再生/一時停止 | LボタンまたはRボタン×2回 |
音量を上げる | Rボタン×1回 |
音量を下げる | Lボタン×1回 |
次の曲へ | Rボタン×3回 |
前の曲へ | Lボタン×3回 |
着信応答 | LボタンまたはRボタン×2回 |
通話オフ | LボタンまたはRボタン×2回 |
着信拒否 | LボタンまたはRボタンを2秒長押し |
ノイズキャンセリングモード切替 | Lボタンを2秒長押し |
音声アシスタント | Rボタンを2秒長押し |
Appendix. スペック
重さ | 約52g (充電ケース+本体両側) / 約5.2g (イヤホン本体 片耳) |
防水規格 | IPX5 |
再生可能時間 | 最大7時間 (ANC ON) / 最大9時間(ANC OFF) |
充電時間 | 約1時間 (イヤホン)※ / 約2時間 (充電ケース) 約3時間(充電ケース、ワイヤレス充電) ※10分の充電で2時間使用可能な急速充電に対応 |
充電端子 | USB TYPE-C |
Bluetooth規格 | Bluetooth 5.3 |
Bluetoothプロファイル | A2DP, AVRCP, HFP |
対応コーデック | SBC / AAC / aptX Adaptive / LC3(予定) |
Chipset | Qualcomm QCC3071 |
パッケージ内容 | 本体、充電ケース、 イヤーチップ (XS / S / M / L) 、 USB-TYPE C ケーブル、 取扱説明書 |
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