2023年のSOUNDPEATSは、怒涛の新製品リリースを行っています。1万円を超えますが音質にこだわった「Opera 03」「Opera 05」、音質重視でノイズキャンセリングを削った「Engine 4」、つい最近発表された、aptX Adaptive losslessに対応したオープンエアー型の「Air 4」・・・。怒涛のラッシュで若干かすんでしまった感はありますが、年初に発売された「Caplsue 3 Pro」は音質・機能・価格のバランスが整った製品として継続販売されています。
以前、この「Capsule 3 Pro」を自腹で購入してファーストインプレッションをお届けしていますが、今回、あれから数か月使ってみたところで、あらためてレビューしたいと思います。
概要・特徴
SOUNDPEATS「Capsule3Pro」は、発売当初は最上位機種といっても良かったのですが、今となってはミドルクラスとも言える位置付けのイヤホンになります。一番大きな特徴はLDACコーデックに対応し、ワイヤレスでハイレゾ音源に対応していることです。LDACコーデックに対応しているのは今のところAndroid機だけなので、Android機で使うと本領を発揮します。
- ハイレゾオーディオワイヤレス認証コーデック「LDAC」に対応
- 12mmバイオセルロース製ダイナミックドライバーを採用
- ハイブリッド式アクティブノイズキャンセリングを搭載、最大43dBのノイズ低減効果
- イヤホン本体で最大8時間、充電ケース併用で最大52時間の長時間再生
- 70ms低遅延ゲームモード搭載
- IPX4(生活防水レベル)の防水規格に対応、汗や少々の水濡れも大丈夫
- SOUNDPEATSアプリに対応、音質のカスタマイズが可能
本機は高音質・機能性・コストパフォーマンスを両立させたモデルです。Amazon等では普段8,480円、セール時は7,000円台前半、安い時は6,000円台で購入することができます。ライバル機はEarfun社の「Air Pro3」、そして同じSOUNDPEATSの「Mini Pro HS」「Air4 Pro」あたりになると思います。
本機最大のセールスポイントはハイレゾに対応した完全ワイヤレスイヤホンで、ハイレゾ対応コーデックの「LDAC」に対応していることです。20Hz~40kHzの広い再生帯域に対応(通常は20Hz~20kHz)していて、音の出口にも大口径の12mmバイオセルロース製ダイナミックドライバーを使っており、良い音質で音楽を楽しめるようになっています。
機能面では、ハイブリッド式のノイズキャンセリングを搭載していて、最大43dBのノイズ低減効果が見込めます。フィードフォワードマイク(外側のマイク)とフィードバックマイク(内側のマイク)の両方で集音した結果でノイズを消すので、フィードフォワード(外側)だけの方式よりもノイズ打ち消し効果が大きくなることが見込めます。
防水はIPX4相当なので、一般的な用途では十分な防水性能があります。
パッケージ内容
パッケージの内容は、本体、充電ケース、イヤーピース(S/M/L、Mは本体に装着)、充電ケーブル(USB TYPE-C)、マニュアルです。
外観
充電ケース
SOUNDPEATS Capsule3 Proの充電ケースは丸みを帯びた形をしています。艶消し加工のブラックで、開閉部分にグレーのラインがひかれています。サイズは若干大きめで、寸法は縦5cm、横6.7cm、厚さ2.6cm程度です。
本体込みの重量は50gです。AirPods Pro(第2世代)のケースがこれより小さいのに62gあってずっしり感じるのに比べると、一回り大きいのに軽いので、重量感はさほど感じないと思います。
背面のヒンジにあたる部分には、銅色でSOUNDPEATSロゴが配されていて、少しでも高級感を出そうとする努力の跡が見られます。が、全体的にはプラスチック感が強いので、高級感を感じるかと問われると微妙なところかと思います。
充電端子は底面にあり、これも銅色+青です。写真では判別できませんがその横にはリセット用のボタンも配置されています。
ふたを開けると、中はツヤありのグレー色です。本体の収納はステム(細長い部分)を内側に、イヤーピースを外側にする形になっています。このタイプは装着するときや収納するときに本体の向きをくるっと変える必要がありひと手間かかるので、個人的には使い勝手面では今一つだと思っています。
本体
カナル型イヤホンの本体はやや大きめで、ハウジング部分は大きく、ステム部分も太めです。重量は片耳で約4.7gあります。
イヤーピースのジョイント部分(音の出口)は楕円形になっていて、銅色の金属でガードされているところはデザインに対するこだわりを感じます。
本体上部には、フィードフォワード用のマイクがついています。
マイク部とセンサー部は銅色であしらわれていて、なかなか目立つ個性的なデザインです。
音質・各種性能
音質レビュー
本機の大きな特徴の1つ「LDAC」コーデックでの接続は、今のところAndroid機に限られていて、iPhoneで使おうとすると「AAC」コーデックでの接続になります。今回も前回のファーストインプレッションと同様、Android機(Xiaomi Mi 11 Lite 5G)+Amazon Music Unlimitedの組み合わせで、楽曲は「ULTRA HD」になっているもので確認しています。
まず、本機はアクティブノイズキャンセリング(ANC)をONにすると音質が変化します。1万円以下のイヤホンではわりとよくある傾向なのですが、ANCをONにすると低音域が強調されます。ただ、本機に関してはかなり上手に低音域を強調しており、ON/OFFで感じる変化は比較的緩やかな印象です。普段使っているときもONにしていることがほとんどなので、今回のレビュー時もONにしています。
全般の印象は比較的すっきりした感じの音で多数の音が鳴ってても全体がつぶれることはない感じです。各音域間のバランスはやや低音強調ではあるものの良好な印象です。音の傾向としては繊細なタッチで聞かせるというよりも、勢いで勝負といった趣で野太さを感じるような傾向な気がします。ピアノの音のつややかな感じとか、ドラムをたたいた時の張り感みたいなものは生々しさに欠けて、デジタルに鳴らしているような印象になります。
低音域はズンズン響く音もしっかりきますし、沈むような低音やグルーブ感ある音もしっかり伝わり、定位感も良好です。中音域も痩せた感じはなく、派手めの音で勢いがある反面、しっとり感とかツヤ感みたいな感じよりは、やや乾いた感じの音です。好みが分かれるところすれば高音域で、決して高音域が出ていないわけではなくちゃんと出ているのですが、少し濁り感があるというか、伸びやかさに欠けるようなざらついた感じの音になります。完全に伸びきらないところで壁に当たってつぶれるような印象です。これはこれまで聞いてきたSOUNDPEATSのイヤホン(Mini Pro HS、T2)にも共通する傾向なので、メーカーとしてこういう音づくりなのかもしれません。ただ、本機「Capsule3 Pro」は前述のMini ProHSやT2よりは高音域の伸びも良い印象があります。
なお、Android機でLDACとAACを切り替えて聞いてみましたが、正直なところさほどの変化はなく、気持ち解像度が上がったかな、くらいの印象です(自分の耳がいまいちなのかもしれませんが…)。むしろANCをON/OFFしたときの音の変化のほうが激しく感じます。おそらく電車の中など、ANCの恩恵を感じるような環境下ではLDAC/AACの違いは分からないんじゃないかと思います。
アクティブノイズキャンセリング機能
本機のアクティブノイズキャンセリングは、特徴でも触れたとおり、フィードフォワード+フィードバックのハイブリッド式を採用していて、最大43dBのノイズ低減効果があると謳われています。
実際に使ってみると、確かに効果をはっきり感じられるほどには効きます。電車の中では低い音域を中心に低減してくれますし、地下鉄区間でも破綻することはありませんでした。エアコンの音は結構カットしてくれますし、雑踏の中でもある程度は軽減してくれる印象です。とはいえ、AirPods Pro並みとまではいかず、1万円前後のイヤホンとしてはしっかり効いているほう、という印象です。
ANC ON時には若干ではあるもののホワイトノイズがのるようです。これも1万円以下のイヤホンは総じてホワイトノイズがのるので本機が特別劣っているということはなく、むしろこれくらいに抑えられているのであれば優秀なほうではないかと思います。
気になるのは風切り音で、Amazonの販売ページでは「マイクの位置も最適化することで、風切り音を抑え、屋外利用時にも気にならなくなります」と書かれていたりしますが、結構盛大に風切り音がします。もちろん、AirPods Proやその他のイヤホンでも風切り音はしますが、本機よりは少な目な印象で、本機「Capsule3 Pro」は1世代前の機種とか、5,000円以下のANC搭載機とさほど変わらないような感じがしますので、ここは残念なポイントです。
外音取込モードは、自然な感じというわけではなくて、周りの音からちょっと低音をカットしたような乾いた感じで聞こえてきます。もちろん人の声はきちんと聞こえてくるので、実用上は問題ないレベルに仕上がっています。
遅延・音量・マイクの音質など
本機をいろいろなところに持ち運びましたが、電波に関してはとても安定していて、通勤電車の中、ターミナル駅の雑踏、休日の人込みなどでも安定して音楽を楽しむことができました。
遅延に関しても全く問題なく、通常のモードで動画を見ても違和感なく見ることができますし、もし違和感があればゲームモードにしてさらに低遅延にすることも可能です。
マイクについても問題なく、Zoomを使って確認してみましたが、相手側に問題なく伝わる音質に鳴っていました。通話についても問題なく行うことができました。
iPhoneに接続した場合mボリュームを最小にしても大きめの音になってしまうことがあります。本機はボリュームを最小にした場合、きちんと小さい音で聞くことができます。さすがにミドルクラス以上のイヤホンなので、この辺はきちんとつくられています。
SOUNDPEATSアプリ
本機はSOUNDPEATSの共通アプリ「SOUNDPEATS」に対応しています。アプリは使用者に合わせてイコライザーを設定してくれる「アダプティブイコライザー」機能に対応しているほか、プリセット設定・自分で設定することもできます。また、アプリを使ってファームウェアのアップデートを行うこともできます。
総評
SOUNDPEATSのミドル~ハイクラスイヤホン「Capsule3 Pro」は、音質・機能・価格のバランスをとった機種になります。音質面では「LDAC」コーデックを使えるハイレゾ仕様、ハード的にもこだわり、機能面ではハイブリッドANC、アプリ対応、IPX4防水などの機能に対応しています。
最近のイヤホンで考えられる機能はマルチポイント接続以外はおおむね搭載していますし、音質面ではそこそこという感じで、なかなか良いイヤホンと言えると思います。価格的には概ね8,000円台、安くて7000円台前半、たまに6000円台、という感じなので、セールの時等に6,000円台で入手できれば良いと思いますが、7~8000円台で買うとなると、個人的には音質面の好みと、音質以外の機能面でもLDCAを除いて本機とさほど変わらない「EarFun Air Pro3」のほうが良いかな、と思いました。
Appendix. 操作方法
ボタン操作
本機「Capsule3 Pro」の操作はタッチセンサーに触れることで行います。以下では便宜的に「ボタン」としています。
再生/一時停止 | L(左)ボタンまたはR(右)ボタン×2回 |
音量を上げる | Rボタン×1回 |
音量を下げる | Lボタン×1回 |
次の曲へ | Rボタンを1.5秒長押し |
前の曲へ | – |
電話にでる/電話を切る | LボタンまたはRボタン×2回 |
着信拒否 | 着信時にLボタンまたはRボタンを1.5秒長押し |
音声アシスタント(Siri/Google) | Rボタン×3回 |
ノイズキャンセリングモード切替 | Lボタンを1.5秒長押し |
ゲームモード切替 | Lボタン×3回 |
ペアリングモードへ入る | 充電ケースのボタンを3秒長押し |
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