Earfun社は、数年前に出た「Free Pro」が安価で高性能ということで注目を集めて以来、良質のイヤホンを出し続けているメーカーです。2023年の1月に発売された「Air Pro 3」は当サイトでもレビューしていますが、低音域の強烈さは賛否両論あるものの、総合的にみて音質も良く、ノイズキャンセリングの効き具合も良く、アプリに対応しているなど高性能で、よく売れているイヤホンの1つです。
EarFun社のイヤホンのうち、アクティブノイズキャンセリングを搭載したイヤホンは「Free Pro」「Air Pro」の2系統があり、「Free」がつく機種は軸がない四角いデザイン、「Air」がつく機種はスティック状の軸があるデザインです。
今回レビューする「Free Pro 3」は、軸部分がない四角いデザインの機種となります。当サイト管理人は前作の「Free Pro2」と「Air Pro3」を結構使っているので、この2機種との比較も含めてレビューしてみたいと思います。
概要・特徴
- ハイレゾ相当の高音質コーデックaptX Adaptiveに対応、ハイレゾ認証取得
- クアルコム社先端チップQCC3072を搭載、Snapdragon Sound対応
- ハイブリッド式ノイズキャンセリング機能搭載、最大43dBのノイズをカット
- マルチポイント接続機能
- 計6基の通話用ENCノイキャンマイクが内蔵され、クリア通話を実現
- IPX5防水規格、日常生活に十分な防水性能
- ワイヤレス充電対応・急速充電
- Earfunアプリ対応
本機「Earfun Free Pro3」は、さまざまな機能を搭載していて、特徴も多岐にわたります。そのわりには、お値段大体7000円台、安ければ6000円台で購入できるリーズナブルさです。
本機はQualcomm社のチップセット「QCC3072」を搭載していて、ハイレゾ相当の音質を実現するコーデック「aptX Adaptive」に対応しています。ハイレゾ認証を受けている旨がホームページに書かれています。また、Qualcommが提唱する「Snapdragon Sound」に対応しているので、対応スマホ(Snapdragon 8シリーズが主)があれば、本機の性能をフルに発揮することができます。
当然のことながら、本機はアクティブノイズキャンセリング(ANC)にも対応しています。スペック上は-43dBとされているので、同社の「Air Pro 3」とほぼ同じ性能となっており、なかなかの効き具合になると思われます。
このほかにも、同時に2台の機器と接続できるマルチポイント接続や、IPX5相当の防水規格、アプリ対応、さらに充電ケースはワイヤレス充電に対応と、機能はてんこ盛りです。
機能面で唯一残念な点があるとすれば、装着検出機能を装備していないことでしょうか。この機能があればほぼ完ぺきだったのですが。
主要機能対応表
主要機能をFree Pro3、Free Pro2(前作)、Air Pro3で比較してみました。Qualcommチップを使っているので、概ねAir Pro3と同じような性能です。
機能 | Free Pro3 | Free Pro2 | Air Pro 3 |
---|---|---|---|
対応コーデック | aptX Adaptive / LC3 / AAC / SBC | AAC / SBC | aptX Adaptive / LC3(予定) / AAC / SBC |
ハイレゾ認証 | ○ | × | × |
アクティブノイズキャンセリング対応 | ○(-43dB) | ○(-40dB) | ○(-43dB) |
外音取込モード | ○ | ○ | ○ |
低遅延(ゲーミング)モード | ○(55ms) | ○(80ms) | ○(55ms) |
マルチポイント接続 | ◎(2台自動接続) | × | ◎(2台自動接続) |
装着検出機能 | × | × | × |
アプリ対応 | ○(Earfunアプリ) | × | ○(Earfunアプリ) |
防水対応 | ○(IPX5相当) | ○(IPX5相当) | ○(IPX5相当) |
ワイヤレス充電対応 | ○ | × | ○ |
急速充電対応 | ○(10分の充電で2時間再生) | ○(同左) | ○(同左) |
パッケージ内容
パッケージの内容は、本体、充電ケースのほかに、イヤーピース(XS,S,M,L,XL)、低反発イヤーピース、イヤーフック(S,M,L)、USB Type-Cケーブル、取扱説明書、細い綿棒(Cleaning Stick)です。イヤーピースのサイズの多さ、低反発イヤーピースまで付属している点はとても良いです。綿棒は、アルコールに浸して接点とイヤーピース、スピーカーのメッシュ部分を掃除するためのものです。
外観
充電ケース
ケースは小ぶりで持ち運びが行いやすいサイズです。大きさは67mm×26.5mm×30mmです。ケース上部にはearfunのロゴがあしらわれています。
側面にはUSB Type-C端子がついています。
本体を収納するとこんな感じ。本体が適度に出っ張っているのと、イヤーフックのゴム部分が指に触れるのですべりにくく、この形状のイヤホンとしてはかなり取り出しやすいです。
本体収納時の重量は実測で41.4gです。Airpods Pro2が63gくらいあるので、だいぶ軽いです。
本体
本体はイヤーフック付きの四角い形状をしていて、かなり小型です。
本体サイズの割には厚みがあり、周囲をイヤーフックが囲っています。
イヤーピースの形状は素直な円形です。スピーカーメッシュは独特です。
重量は約5.4g。格安のイヤホンと比べると若干重いです。Airpods Pro2の本体も約5.3gなので、ケースは軽いですが本体はAirPodsと同じくらいの重量があります。
装着感
本体サイズが小さめなこともあり、耳にすっぽりはまる感じで装着感は良好です。首を振っても外れるような心配はないと思います。でっぱりもさほどではなく、寝ホンとしても使えると思います。
Earfun Free Pro2、Air Pro3と比較
前作Free Pro2と、形状が違うAir Pro3を並べてみました。左がFree Pro2、右側がAir Pro3です。本体形状はFree Pro3が一番小さく見えます。充電ケースはFree Pro2が一番高級感があって小さいです。Free Pro3の充電ケースはほんの少し大きくなったようですが、Air Pro3よりは小ぶりです。
音質・使い勝手
音質レビュー
Earfun「Free Pro3」の音質は、1万円以下のイヤホンの中ではかなり良好と言っ良いと思います。低音域がとても豊かで、音の輪郭は多少甘いですがかなりはっきり主張してきます。迫力のある低音で、バスドラムやベースの音は気持ち良く聞こえてきます。中音域は他の音域に比べると少し抑制的な印象で、ボーカルやピアノは若干乾いた感じの音に聞こえます。高音域はキレが良い割には鳴りすぎず、聞き疲れしにくく程よい感じの鳴り方をしてくれます。
全体的には低音強調のドンシャリ系サウンドですが、中音域が引っ込みすぎて詰まったような感じもなく、高音域は適度に主張があってクリアでキレの良いサウンドを奏でてくれます。迫力重視で各音がそれぞれ強く主張してくることから音は近場で鳴っているような感じです。広がり感は音の主張に隠れがちではありますが、全くないわけではありません。
音質をFree Pro2とAir Pro3と比較
本機の音質を前作のFree Pro2、Air Pro3と聞き比べてみました。本機Free Pro3の音質は、Free Pro2よりボーカル域を聞きやすくしたうえで、Air Pro3に近い低音の迫力を加え、さらにAir Pro3より1段階クリアさを上げたような音をしていて、この3機種の中ではFree Pro3が一番音が良く感じました。
Air Pro3との比較をもう少し詳しく書くと、Air Pro3は、当初低音域が過度に強くてびっくりしましたが、幾度かのファームウェアアップデートを経て、デフォルト状態でもバランスが良くなってきています。
Air Pro3とFree Pro3を聞き比べてみると、低音の強さも含め、音の傾向は結構似ている気がします。違う点は、Free Pro3はAir Pro3よりも高音域の出音が良く、低音域もやや締まって聞こえてくるので、音の輪郭がわりとはっきりしています。
一方、Air Pro3のほうはやや全体が低音域に埋もれてしまっているように聞こえます。Air Pro3もアプリでイコライザーをいじるとだいぶ改善しますが、何もいじらない状態ではFree Pro3のほうが良いようです。
アクティブノイズキャンセリングの効き具合
アクティブノイズキャンセリングの効き具合は、1万円以下の完全ワイヤレスイヤホンとしては標準的~やや効きが良いレベルかと思います。電車の中でANCをONにすると、レールの継ぎ目を拾う音や周りの轟音がすっと軽くなったような印象を受けます。軽減効果があるのは低音域が主で、それ以外はそこまで軽くならず、むしろ、車内アナウンスが聞き取りやすくなります。
ANCをONにした場合、機種によっては低音域が強調されたり、ホワイトノイズが目立つようになったりしますが、本機の場合、強烈な変化はないですが同様の傾向で若干変化するように感じます。
本機はアプリで個別の耳道に合わせてANCを向上できる「耳適応」機能がついていて、デフォルト、みみ1~3まで選ぶことができます。この機能を試してみたところ、デフォルト以上に強くノイズキャンセリングが効くわけではありませんでしたが、効き具合には差を感じましたので、試してみると良いと思います。
ANCの効き具合をFree Pro2やAir Pro3と比べてみたところ、ANCの効き具合はAir Pro3以下、Free Pro2と同等かちょっと上、といったくらいの感じでした。ANCに関してはAir Pro3がより満足度が高そうです。
また、Earfunの機種に共通する傾向として、歩いているときに足が接地したときの振動?を拾いやすいというものがあります。歩きながら使っていると、他のメーカーのイヤホンよりも接地音が気になります。イヤーピースを変えても完全にはなくならないので、こういうもんだと割り切るしかありません。
遅延/ボリュームコントロール
動画の遅延に関しては、Youtubeアプリで視聴してみたところ、あまり違和感を感じずに見ることができました。アプリで遅延を計測してみると420ms(画像左)ありました。本体自体の遅延が70msくらいあるので、本機の遅延は大体350msになります。低遅延モードにして計測すると、260ms(画像右)に一気に縮まります。本体の遅延を差し引くと190msです。メーカー公表値が55msなので、これが正しいとすると、計測値との差は本体固有分とあわせて205msのズレがあることになります。
iPhone使用時のボリュームコントロールについては全く問題なく、ボリューム最小では十分小さい音が鳴りますし、ボリュームを上げていってもいきなり大きくなることはなく、徐々に大きくなっていきます。大きいボリュームが苦手な方でも問題なく使うことができると思います。
マイクの性能
本機の特徴には「計6基の通話用ENCノイキャンマイクが内蔵され、クリア通話を実現する」と書かれており、マイクの性能もかなり期待が持てます。Zoomを使ってマイクの性能を確認したところ、拾ってくる声はやや小さい気がしますが、こもっている感じはなく相手に伝わります。できれば少し大きな声で話したほうがよさそうです。
「Earfun Audio」アプリ
本機は「Earfun Audio」アプリに対応しています。アプリでは、ANCのON/OFFやゲームモード設定、イコライザー設定、操作のカスタマイズ機能、ファームウェアのアップデート等を行うことができます。
ANCの項目でも触れましたが、本機はノイズキャンセリングの効き具合を選ぶことができます。
アプリのイコライザー設定では、「Oluv氏のサイン」というプリセットを選ぶことができます。Oluv氏は、どうやら「oluv’s gadgets」というチャンネルを運営しているYoutuberのようで、この方が監修したものだそうです。このプリセットはなかなか良くて、「バランスが良い」を選択すると低音域が抑えられ音が全般明瞭に、「低音ブスト」を選択すると音の傾向は変わらずに引き締まった音に変わります。常用しても良いくらい良くできていると思います。
まとめ
本機「Earfun Free Pro 3」は、1万円以下という価格で、様々な機能を搭載しつつ音質にも程度のこだわりを見せた、Earfunならではの高コストパフォーマンスな機種に仕上がっています。
音質は低音重視の迫力がありつつ明瞭なサウンドで、アプリを使って好みの音に替えられる柔軟性があります。マルチポイント接続に対応しており、2機のスマートフォンやパソコンに同時接続が可能で、一度設定すれば2機種に勝手につながるので、PCとスマホで仕事している方等にはかなり便利な機能です。そのほか、充電ケースがワイヤレス充電に対応しているので、充電器に置くだけで充電できる便利さがあります。
一方で、ちょっと残念なのはアクティブノイズキャンセリングです。電車の中での聞き具合を確認したところ、それなりに効くことは確認できましたが、Air Pro3と比べるとやや聞き具合が悪く、また、歩くたびに接地音が気になります。
今回試したEarfunの3機種は、前作Free Pro2はそこそこの性能を価格重視で、という場合に良いと思いますが、機能面では一段劣るので価格以外ではお勧めしません。Free Pro3とAir Pro3は、何を重視するのかによって変わると思います。就寝時に使う、ノイキャン性能はそこそこで良いといった方は、デフォルトでの音質に優れる「Free Pro3」が、外出で使う場合など、アクティブノイズキャンセリングを重視するなら「Air Pro3」が良いのかなと思います。Air Pro3は音質をイコライザーで変えられるので、自分が買うとすればノイズキャンセリング重視でAir Pro3かな、というところです。
Appendix. 操作方法
再生/一時停止 | L(左)ボタンまたはR(右)ボタン×2回タッチ |
音量を上げる | R(右)ボタン×1回タッチ |
音量を下げる | L(左)ボタン×1回タッチ |
次の曲へ | R(右)ボタン×3回タッチ |
前の曲へ | L(左)ボタン×3回タッチ |
電話にでる/切る | L(左)ボタンまたはR(右)ボタン×2回タッチ |
着信拒否 | L(左)ボタンまたはR(右)ボタンを2秒長押し |
音声アシスタント(Siri/Google) | R(右)ボタンを2秒長押し |
ノイズキャンセリングモード切替 | L(左)ボタンを2秒長押し |
ゲームモード切替 | (アプリで設定) |
ペアリングモードへ入る(リセット) | 本体をケースに収納した状態でケースのボタンを3秒長押し |
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