今回レビューする「T13 ANC」(HT06)は、当サイトでお勧めしているゲオの「GRFD-SWE100QT13」(元はQCYのT13)と同じ機種名「T13」を冠したうえで、アクティブノイズキャンセリング機能を付加した完全ワイヤレスイヤホンです。しかもお値段は3000円台で購入可能な、大変お財布に優しい設定です。T13は値段のわりに音質が良い印象だったので、音質が同等で+ANC+コスパなら最高だなぁと思って購入しました(今回は自腹購入です)。本機をしばらく使ってみましたのでレビューしたいと思います。
概要と特徴
「QCY T13 ANC」(HT06)は、型番から推測すると値段のわりに高音質だった「QCY T13」(ゲオだと「GRFD-SWE100QT13」)の後継機種のような機種だと思われます。
- ほぼフル機能搭載なのに3,000円台で購入できるコストパフォーマンスの高さ
- 最大30dbのフィードフォワード式アクティブノイズキャンセリング(ANC)を搭載
- 低遅延ゲームモードに対応
- 10mmのダイナミックドライバー
- 風ノイズ低減設計&計4基のマイクを搭載したENCノイズキャンセリング
- 本体のみで最大7時間の音楽再生時間(ケース込みでは最大32時間)
- IPX5防水
- 専用アプリ「QCYアプリ」対応
「QCY T13 ANC」(HT06)は、高価格帯の完全ワイヤレスイヤホンに装備されている機能が一通り備わっている割にはAmazonで3000円台で購入できるという、QCYならではのとても高コストパフォーマンスなイヤホンです。
前回レビューした「QCY ArcBuds」も同じような性能で4,000円台でしたが、大きく異なるのは本体の形とノイズキャンセリングの性能です。ArcBudsは45dBと数値上は強力で、実際の使用感でもきちんと効いていることが実感できましたが、本機「T13 ANC」は30dBで、数値上の差は大きいです。
それ以外の機能についても少しづつ差がついていますが、本体のみで最大7時間の音楽再生時間、4基のマイクを搭載した通話機能、IPX5相当(シャワー等の水流を浴びても大丈夫な程度)の防水性能や、スマホアプリ対応等々、考えられる機能は概ね搭載しているという、機能面でとても優れた機種に仕上がっています。
パッケージ内容
QCY T13 ANCのパッケージ内容は本体のほか、充電ケーブル(USB TYPE-C)、イヤーピース(XS/S/M/L、Mは本体に装着済)、マニュアル(中国語、英語)です。日本語のマニュアルはAmazonの販売ページにある「商品ガイドとドキュメント」欄の「ユーザーガイド (PDF)」からダウンロードできます。イヤーピースが4種類付属しているのが良いです。
外観
充電ケース
QCY ArcBudsの充電ケースは角がとれた正方形で、幅55mm、奥行き55mm、高さ29mmです。表面はさらさらしていて光沢のない加工です。本体を収納した状態での重量は実測値で46.2gでした。
充電ケースの右側面にはUSB TYPE-Cのコネクタが配置されています。
本体を収納した状態で充電ケースを開けるとこんな感じ。真ん中にはリセットボタンがついています。ケースのつくりはそんなに悪くないです。
本体
本体はノーマルのT13と同じスティックがついた形状です。本体重量は実測で4.2gです。
イヤーピースとのジョイント部分は楕円形です。ノーマルのT13が普通の円形だったので、音質は異なることが想像できます。
T13、HT05と比べてみた
QCY T13 ANCを兄弟機であるノーマルのT13、HT05と比べてみました。左がノーマルのT13、真ん中がT13 ANC、右側がHT05です。ノーマルT13とHT05はゲオで購入したものなので、QCYロゴがありません。大きさはほとんど一緒であることがわかります。ノーマルT13だけ表面は光沢があります。
本体は左からノーマルT13(ゲオQT13)、T13 ANC、HT05(ゲオ)です。T13 ANCはT13と同じくらいの大きさ、HT05はT13系と比べると大きいことがわかります。
音質・各種性能
音質レビュー
本機「QCY T13 ANC」の対応コーデックはSBCとAACのみです。高価格帯の機種に見られるようなLDACやapt-X Adaptiveなどの高品位コーデックには対応していませんが、価格を考えれば十分です。
結論から申し上げると、本機の音質はノーマルのT13と全く異なります。ノーマルのT13は豊かな低音域と伸びの良い高音域が良いいわゆるドンシャリ傾向の音質でしたが、本機「T13 ANC」は低音域が控えめで、全体的には若干ドライな傾向の音質に仕上がっています。
低音域は全体のバランスの中では控えめで、あまり目立ちません。ただ、よく聞いてみるとちゃんと鳴っていることがわかります。バスドラム等は腹に響くような音を鳴らす感じではないものの、ベースの音の再現力はなかなか良く、演奏の生々しさのようなものは感じることができます。
中音域は音楽によっては若干締まりすぎて痩せている印象を受けるかもしれませんが、ぼんやりすることなく鳴らしています。低音弱め、高音強めな印象の中、ドラムのアタック感とかピアノのツヤ感、弦をはじく生々しさのような表現は上手とは言えず、淡々と鳴らしているような印象になります。
高音域は強めで、こもり感を感じることもなく、割と見通しが良い印象です。低音域、高音域と比べると強めにでているので、全体としてとらえるとシャリシャリした音に仕上がっていて、場合によっては聞き疲れしてしまうような印象です。
本機の音質、イヤーピースがマッチしていないときの音の傾向に近いので、Lサイズも試してみたところ、若干低音域が改善されましたが全体的には変わらなかったので、こういう味付けなんだろうと思います。
解像感やクリアさは一定ありますが、ダイナミック性に欠けていて、音数が多くなった時にややごちゃついてうるさくなってしまう印象があります。ノーマルのT13と比べると完成度は今一歩で、チューニング余地が相当あると思います。
じゃあ、アプリのイコライザーで調整すればいいじゃないか、と思っていろいろ試したのですが、それについてはアプリのところで書きたいと思います。
低音域がもう少しあると良いので、イヤーピースをいくつか試してみました。試した中では、ソニーの「ハイブリッドイヤーピース Lサイズ」が良い感じに低音域を伸ばしてくれて、バランスが良く引き締まった感じの音になりました。普段はMサイズを使っていますが、今回はなぜかLサイズのほうが良い感じでした。結構いい感じに変わりますので、購入される方はイヤーピースを変えてみると良いと思います。
アクティブノイズキャンセリングの性能
本機にはアクティブノイズキャンセリング機能がついていますが、「フィードフォワード方式」のみになっています。「フィードフォワード方式」というのは、外向きについているマイクから音を拾って、打ち消すための音を生成する方式です。前回レビューした「QCY ArcBuds」は、おそらく「フィードフォワード方式」+「フィードバック方式」のハイブリッド式で、「フィードバック方式」は、今度は内側の耳に近いところにマイクを配置し、外側と内側の両方の音から計算してノイズを打ち消す方式で、より高い効果を見込めます。このため、フィードフォワード方式のみの「T13 ANC」は最大30dBの効果に対し、ハイブリッド式の「ArcBuds」は最大45dBと大きな差があります。
実際に使ってみると、明らかにノイズキャンセリング効果は低めで、ONとOFFの差はそんなに大きくありません。全くノイズキャンセリング効果がないわけではありませんが、エアコンの音もさほど減らないですし、電車の中でも低音域が若干カットされる程度です。「ArcBuds」のレビューの際にも「過度な期待は禁物」と書きましたが、本機に関してはさらに効果が低いため、ANCの効果を期待しないほうが良いです。
本機は一度充電ケースに戻しても直前のANC ON/OFFの状況を記憶していて、一度ANC ONにしておけば、次に装着したときにもANC ONの状態で復活することができます。
ANC ONの場合、風切り音が結構派手に聞こえてきてしまう機種もありますが、本機の風切り音は比較的優秀なほうだと思います。
マイクの性能
本機「QCY ArcBuds」は、4基のマイクを搭載し、ENCノイズキャンセリングに対応しています。実際Zoomを使って確認してみたところ、「QCY ArcBuds」と傾向は似ていて、若干シャリシャリしているものの声はこもることなくちゃんと拾っており、普通の声量でも十分相手に伝わる音質だと思います。
遅延度合い・ボリューム
遅延についてはノーマルモードでYoutubeをみても違和感はなく、十分実用的だと思います。仮に違和感があるとしても、本機にはゲームモードを搭載しているので違和感の軽減は可能だと思います。Youtube等でドラマやニュース等、人の声がメインな動画を見るととても聞きやすく、好印象です。
また、iPhoneで使用する場合、最低音量にしても大きめの音になってしまう機種もありますが、本機「T13 ANC」はそのようなことはなく、最低音量ではきちんと小さな音量になるので、安心して使うことができると思います。
アプリ対応
本機はQCYのアプリ「QCYアプリ」に対応しています。アプリはANCの効き具合、イコライザー機能、ボタン操作方法の変更、ゲームモードON/OFF、ファームウェアアップデート等が可能です。
音質のところで述べましたが、本機の音質バランスは改善の余地があると思って、いろいろイコライザーをいじってみたのですが、これ、ノーマル状態ですでに結構音質をいじっているらしく、EQをフラットにするととてもおとなしい音質に変化してしまいます。そこからいろいろいじるのですが、イコライザーの調整幅が狭めで効きが悪く、あまり音が変わりません。じゃやっぱやめようということで「デフォルト」に戻すと、全体が持ち上がってノーマルのT13に近い感じの音に一瞬なるのですが、すぐに乾いた音に戻っていきます。たまにそのT13に近い感じの音が続く場合もあるのですが、実際は全体を過度に持ち上げているので、音が割れてしまいます。さすがにこのイコライザーは今一つなので、ファームウェアをアップデートして改善してほしいところです。
総評
「QCY T13 ANC」(HT06)は、3,000円台で購入可能な製品にもかかわらず、上位機種である「QCY ArcBuds」や「QCY HT05」と機能の数としては同等に近いものを搭載した、QCYらしい高コストパフォーマンスな機種に仕上がっています。
音質的には低音域が足りないもののこもっている感じはなく、若干乾いた音質に仕上がっていて、音楽を聞くこともできますし、Youtubeなどの動画を見るにも適していると思います。ただ、特徴の一つであるアクティブノイズキャンセリング機能(ANC)はオマケレベルで満足いくものではありません。また、全体的に粗削りで発展途上な印象を受けます。
結局、音質面、ANCいずれも中途半端なところに落ち着いてしまった印象なので、ANCを重視するのであれば、1000円高くなりますが「QCY HT05」のほうが良いと思いますし、音質面を重視するのであれば、1000円~2000円安いノーマルの「QCY T13」や、1000円安い「QCY T17」のほうが良いと思います。
Appendix. 操作方法
ボタン操作
本機の操作はスティック部分をタッチすることで行いますが、下表では便宜的にボタンと表現します。
再生/一時停止 | L(左)ボタンまたはR(右)ボタン×2回 |
音量を上げる | Rボタン×1回 |
音量を下げる | Lボタン×1回 |
次の曲へ | Rボタン×3回 |
前の曲へ | - |
電話にでる/電話を切る | LボタンまたはRボタン×2回 |
着信拒否 | 着信時にLボタンまたはRボタンを1.5秒長押し |
音声アシスタント(Siri/Google) | Lボタン×3回 |
ノイズキャンセリングモード切替 | Rボタンを1.5秒長押し |
ゲームモード切替 | Lボタンを1.5秒長押し |
コメント